2025年5月18日日曜日

【第105話】「311から14年」ついに約束は果たされなかった(25.5.18 )

 311直後、東京電力の社長清水正孝氏が、出張先から東京本社に戻るため自衛隊機に搭乗しようとして拒否されたのに対し、山下俊一氏は、国賓扱い並みに、長崎から自衛隊機に乗り、3月18日、福島入りした。その彼が放った言葉は、
「正しく恐れよ」
という正しい一般論と、次のでたらめな具体論だった。
科学的に言うと、環境の汚染の濃度、マイクロシーベルトが、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、全く健康に影響及ぼしません。ですから、もう、5とか、10とか、20とかいうレベルで外に出ていいかどうかということは明確です。昨日もいわき市で答えられました。『いま、いわき市で外で遊んでいいですか『どんどん遊んでいいと答えました。福島も同じです。心配することはありません。是非、そのようにお伝えください。」(2011年3月21日福島市講演>動画
「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしてる人に来ます。これは明確な動物実験でわかっています。」(同上)

その山下氏が、5月3日に二本松市の二本松北小学校で行った講演会(その動画>前半後半)で、後半の最初の質問に立った地元の寺の住職は次の質問を彼に問うた。

私は命と向き合う仕事をしております。うちのお寺では幼稚園も経営してまして、小さい子どもたちが通っております。僕も色々調べましたが、先ほど先生も言いましたが「正しく理解する」、でも基本的に正しく理解することは不可能だと思うんです。これから福島原発で被ばくされた方のデータが20年後に正しく理解されていくのは分かりますが、現時点で正しく放射の理解することは不可能だと僕は思います.それで僕の義理のおじさんは河田昌東といい、チェルノブイリにずっと行ってる方です。
1つだけ。情報が混乱してる中で何が正しい情報なのかやっぱり個人個人が理解するしかないと思うんですが、情報が混乱しすぎてて何が正しいのか僕は分かりません。
先生の話を聞いた上で先生に1つだけ質問したいのは、ここ二本松が健康に影響がない地域なんであれば、僕らはやっぱりここに住みますし、ここで生活しております、子どももおります、幼稚園の生徒も通ってきます。ですからいろんな覚悟を持って僕は生活してるんですが、先生の話が真実なんであれば、先生にもやっぱり覚悟を持っていただきたい。本当に(講演会場の二本松)北小学校が健康に影響がないんであれば、先生がお孫さんを連れて砂場で遊んでいただきたい[拍手]。できますか。お孫さん連れて北小の校庭で遊べますか
(←その動画は>こちら

それに対する山下氏の答えは次の通りだった。

もしそれを私がしたら皆さん 信じていただけますか。私は基本的に被ばく二世で、親戚郎党みんな原爆で亡くなりました。・・・もちろん、今、住職さんの言われた私への期待というのは痛いほどよくわかります。私がそれに応えて、孫を連れてきて砂場で遊ばせたら、みんなが信じてくれるんだったら、お安い御用だと思います。はい、私は是非住職さんとのお約束を守りたいと思います[拍手]

それから14年が経った2025年の5月。この住職さんに、山下氏は講演会で公言した約束を実行しましたかと聞いたところ、「していない。彼は来なかった」という。

14年前の5月3日、山下氏は福島県の放射線管理アドバイザーとして公人として原発事故のさなか不安におびえる住民たちの前で話をし、質問者の問いに「もしそれを私がしたら皆さん 信じていただけますか 」と前置きをして、「私は是非住職さんとのお約束を守りたいと思います」と約束した。だが、この公人としての約束はついに果たされなかった。一事が万事とはこのようなことを言う。 そして、これは単に14年前の過去の話ではない。未来の原発事故の話を語ったものだ。

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