2026年9月24日木曜日

【第137話】311から15年、「国やぶれてノリ弁あり」。避難者の住宅使用料協議情報の不開示の異常さから、311後の日本社会のレントゲン診断に挑戦する311ノリ弁訴訟の提訴(26.9.24)

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  日野行介さん


      




ノリ弁の開示文書

今頃なに?と人は思うかもしれないが、本日、ひとりのジャーナリストが原告となって国と福島県を提訴した。
その人は日野行介さん。
その内容は、福島原発事故により避難を余儀なくされた市民に提供された応急仮設住宅、その使用料(家賃相当分)が原発事故による「損害」としてどのように扱われ、処理されているか、それを知りたくて、2012年から始まった国、福島県、東電のこの問題の協議資料の開示を求めたところ、14年後の今日でもなお、「もっか協議中」を理由にことごとくノリ弁=黒塗りの不開示の処分。そこで、日野さんはこれに疑問を抱いた‥‥以下の紫色の文は、原告本人ではなく、代理人の推理・推論である。
尤も、それは重箱の隅をつっつく瑣末な問題じゃないの?と思うかもしれないが、それは勘違いだ。国、福島県、東電のこの人たちは、私たちの知らない間に、原発事故避難者の応急仮設住宅の使用料が「損害」に該当するのか、該当する場合どのように最終決着をつけるかについて、私たちより百倍も協議検討している。だから、彼らの協議内容に刺激されて、私たちも彼らに負けずにこの問題を真剣に検討し、その中で、2015年6月の内掘福島県知事の自主避難者に対する無償提供の打ち切りと自主避難者の住宅使用料が「損害」と認められるかという2つの問題は論理必然の関係にない(なぜなら、前者は「建物の明渡し」、後者は「金銭賠償」という別次元の問題であり、なおかつ「損害」の最終的決定権者は内掘福島県知事でないから)という結論に達し、ひとまず2つの問題を切り離して、原発事故の「損害」の範囲の問題について、原発事故というカタストロフィーの実情に即して「損害」論として改めて吟味し直す中で、もし自主避難者の応急仮設住宅の使用料が「損害」と認められるのが妥当となったなら、無償提供が打ち切られた2017年4月以降に、彼らが福島県から要求された家賃は本来なら支払わなくてもよいものになる。2019年後に福島県が自主避難者に要求してきた2倍家賃分も、本来なら(全額か半額かという論点は残るにしても)、東電が賠償すべきものとして拒否できることになる‥‥などなど、これまで「常識」とみなされてきた原発事故で発生した住宅使用料の負担のつけ方がことごとくあべこべになり、ひっくり返る。だからこそ、国も福島県もこのグチャグチャの事態がレントゲン写真のように明らかにされないように必死になってフタをする、つまりノリ弁=黒塗りの不開示の処分を連発するしかない。
311後にゴミ屋敷に化した日本社会で、2012年からこの14年間、いったい何やってんだ。

ますます疑念がふくらんで、国や福島県の不開示決定に対して異議申立てをして第三者機関である情報公開審査会に開示の是非について判断を仰いだ。しかし審査会もこの問題に対しては口をつぐむ態度に終始。もはや残された最後の手段は裁判所しかないと、そこで、本日、このノリ弁の不開示の取消を求めて提訴に至った。
その心は、「国やぶれてノリ弁あり」。
私たちはホントにひどい社会に住んでいますよ、そう言ったのはロシア革命前のロシアを診断した医師で作家のチェーホフ。
ひそかに、願わくば、この裁判が311後のゴミ屋敷と化した日本社会のひとつの鮮明なレントゲン診断とならんことを。原告代理人となった私もそう心に誓った。
                チェーホフとゴーリキー

以下、訴状、記者会見動画、プレスリリース。            

 ◆訴状   訴状全文>PDF



第1、はじめに――本件訴訟の概要と本質――

 原告は、東京電力福島第一原発事故(以下、本件事故という)により応急仮設住宅に避難した避難者(区域外避難者と区域外避難者の両方をいう)の応急仮設住宅の使用料(以下、本件使用料という)は本件事故により発生した「損害」か否かという法律問題(以下、本件課題という)がどのように扱われているのかを知るために、2023年8月、被告国と被告福島県に対して、本件使用料をめぐる求償問題について、求償先の東京電力ホールディングス株式会社(以下、東京電力という)との協議の資料(議事録、電子メール、配布資料、交付文書)」の開示を請求した。これに対し、被告らは、本件使用料をめぐる求償問題は「現在も継続的に協議・検討中のため、仮にその検討途上の内容を公にした場合、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある」旨を理由にあげて行政機関の保有する情報公開に関する法律(以下、法という)5条5号(被告国)及び福島県情報公開条例(以下、条例という)7条5号(被告福島県)の不開示情報に該当するとして不開示の処分をした。

 しかし、この理由は真っ赤なウソである。なぜなら、原告は既に2015年4月、「みなし仮設家賃未請求/東電が自主避難者分難色/事、プレスリリース、故4年 国が全額負担」と協議の内容を毎日新聞紙上で掲載したが(甲11)、これにより不開示の理由とされる上記の「国民・県民の間に混乱」は生じなかったからである。

 しかも、被告国と被告福島県、被告国と東京電力の間で、本件使用料をめぐる求償問題についての協議が2012年から2014年まで断続的に行われたものの、その後6年間もの空白を経て2020年に再開され、2022年10月を最後にまたしても中断されている。これを、強制避難者(区域内避難者)の応急仮設住宅の使用料について原子力損害賠償紛争審査会が2011年8月に指針を出したのと比較したとき、その検討期間、検討経過の余りの違いに言葉を失う。この違いが何を意味するか。それは被告国も被告福島県も本件課題について、とっくに実質的な検討は終了しており、結論も出ている。あとはその結論に沿って実施するタイミングを見計らっているのである。しかし、この情報を公開すると自主避難者を初めとして多方面から様々な意見、批判が噴出するのを恐れて非公開にしている。それは情報公開法が冒頭に掲げる《国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進》の自殺行為にひとしい。今日における民主主義の死命を制する情報公開制度のこうした機能不全をただすため、本件の不開示決定の取消しを求めて提訴する次第である。

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