谷川俊太郎がくり返し語る鶴見俊輔のノンセンス発言(詳細は>第57話)。
「人間っていうのは、どうしても人生にいろんな意味を見つけたがる、意味を追求したがる。だけど、人生には意味だけがあるんじゃなくて、手ざわりというものがあるんだ」
「ノンセンスは存在の手ざわりをわれわれに教える」
それと同じことを言うのが養老孟司。マルというネコと一緒に暮らした生活を振り返って、そこで何があったのかというと、
気分が変わるのです。猫がいる気分というのは、結構落ち着くのです。‥‥猫がいる気分というのが大事で、気分というと何となくそのとき限りで馬鹿にされますが、やはり人生全体を考えると良い気分でいる方がいいですね。年をとると、雰囲気や気分は、学問的ではないけれど、重要なことだと思います。「科学者の横顔Vol.5」
マルというネコの存在には意味もメッセージもない。その意味でノンセンス。それは何も意味を与えない代わりに、それまでにはない気分や雰囲気をもたらしてくれる。それが貴い、何物にも換え難い。それが鶴見俊輔が言う「存在の手ざわり」。
そう思ったら、30年近く前に飼い始めたゲンという犬が思い出された。ずっと、頭がちょっと足りないんじゃないかと思ってきたが、実は足りないのはお前の頭(のバカの壁)のほうで、ゲンはセンスが足りないんじゃなくて、もし喋らせたらスヌーピーにも負けないくらいのノンセンスが満ち溢れていた、最高のノンセンス犬だったんだ。あのノンセンス犬がもたらした未知の奇妙な気分、それは本当に、何物にも換え難い「存在の手ざわり」だった。
いま、彼は私の無二の師だ。
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