2025年1月13日月曜日

【第54話】パンセ:谷川俊太郎の人気の秘密、脱「自意識」(25.1.14)

 谷川俊太郎は現代詩人として珍しく、人気が、老若男女にあまねく人気が高い。
それは何に由来するのか。

それは谷川が老若男女を問わず、人々とのコミュニケーション能力がずば抜けて高いことによる。
では、なぜ、コミュニケーション能力が高いのか。

それは谷川の詩が、「自分の内面を表現し、伝えること」をめざしたのではなく、
脳化社会の外の世界で起きている、彼にとって驚きの出来事を、できるかぎり正確に言葉を使って表現し得たから。
モーツアルトが、自分の耳が聴いた外界の世界の音そのまま楽譜に書きとめたように、彼もまた、自分の目が見た、自分の耳に聞こえてきた世界をそのまま忠実に分かりやすい言葉で紙に書きとめようとした。
ただし、そのためには、選択する言葉の体系が、今や脳化社会の中で意味に囚われて意識言語、概念言語に堕していて、これをそのまま詩に持ち込むことは出来ないと考えた彼は、脳化社会に浸潤されていない、自然世界で使われてきた自然言語によって、脳化社会の外の世界で起きている出来事を表現する必要があると考えた。それは正しい、だが「言うは易き、行い難し」の実践だ。

しかし、それが、どうやったら人々の心に届く表現を獲得するか、という最重要な問いに対する核心的な答えの、しかも最初の一歩だ。

最初の一歩である「人々の心に届く表現を紙に書き留めた」あと、その次の第二歩が、その書き留めた表現をどうやって人々に届けるかという作業。それが【第52話】で書いたこと。

0 件のコメント:

コメントを投稿

【第114話】なぜ環境権は人権として認められないのか。その最大の理由は 環境権は終焉を迎えた「脳化社会に安住する塀の中の法律」の中に収まらず、まだ誰によっても書かれたことのない未来の法「脳化社会の塀の外に出た法律」の切り札だから(25.7.14)

日本の七不思議の1つ それが環境権。日本で環境権という言葉が初めて提唱されたのは半世紀以上前の1970年、 日本弁護士連合会の人権擁護大会の公害問題に関するシンポジウムの中だった。また、その前年の1969年、画期的な 東京都公害防止条例はその前文で「 すべて都民は、健康で安全かつ...